パーソナルカラーの歴史
ドイツの芸術家であり、優れた色彩学者であったヨハネス・イッテンは、40年来の研究の集大成として1961年に出版された著書「色彩の芸術:THE ART OF COLOR」の中で、色彩はクールとウォームに分類することが出来る、と説いています。
また、人のカラーリング(肌、髪、目の色等、人間の肉体の持つ色調)と魅かれる色は関連があることを発見し、その相互関係を自然の四季と関連づけて、統計的に証明しました。(色彩を四季になぞらえて、春・夏・秋・冬に分類した場合、例えば春タイプの明るいカラーリングの人は、自分と同じ春の明るいトーンに魅かれやすい、ということです。)
ここでは自分の持つ色と似た色に魅かれるということだけですが、その色を使うのが得意だということも述べています。
1946年、スーザン・ケージルは、著書「キー・トゥー・カラーハーモニー」の中で、初めてパーソナルカラーシステムのコンセプトを確立しました。
前述のヨハネス・イッテンの色彩論を基に、人のカラーリングを美しく際立てる色彩を見つけるパーソナルカラーアナリシスに応用し、開発したものです。
そして、このシステムは「四季の理論=シーズナルカラーシステム」と名付けられています。これは人の色調を分析し、それを美しく引き立たせる色彩をアドバイスするための理論、及び、その方法を体系化したカラーシステムです。
しかし、当時はこの新しい考え方はあまり注目されませんでした。
1960年、カラーコンサルティングの重要性を知らしめる出来事が起こります。
アメリカ大統領選挙でジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが戦った時、テレビとラジオを使って討論会が行われました。
ニクソンはグレーのスーツにソフトな色合いのシャツ、シックな色合いのネクタイで、一方ケネディは濃紺のスーツに白いシャツ、メリハリのある柄のネクタイといったいでたちでした。当時のテレビは白黒だったので、色みは分からず、色の濃淡のみが分かる状態なので、ニクソンは全体にグレーにぼやけて映り、ケネディは白黒ですっきりと見えたのです。
髪にも白髪が混ざっていたニクソンは、シックでおしゃれな装いだったかもしれませんが、残念ながら実際よりも老けて疲れて見え、若かったケネディは精悍で力強く見えました。
これからのアメリカを担っていくパワーが見た目から感じられたのはケネディだったのです。「ラジオで聞いた人の多くはニクソン氏に、テレビ視聴者はケネディ氏にそれぞれ軍配を上げた。」とキャロライン・ケネディ氏は指摘しています。
このケネディのコントラストの利いた装いを作り出したことで、色というものを有効に利用して、自分自身のイメージを変えたり、センスアップに生かすという考え方が世の中に認められるようになりました。
1980年、スーザン・ケージルの著書「カラー:エッセンス・オブ・ユー」が出版されました。しかし、この本も高価格であったためと、「四季の理論=シーズナルカラーシステム」の本質を充分に解き明かすことが出来なかったために一般には広く受け入れられませんでした。
1981年、キャロル・ジャクソンの著書「カラー・ミー・ビューティフル」が発表され、この本がベストセラーになると同時に、パーソナルカラーの考え方が社会的に受け入れられるようになりました。
この本は価格の手頃さと、自分のカラーをステップ・バイ・ステップで理解できる読みやすさのために、広く支持されました。しかし基本的にはスーザン・ケージルの「シーズナルカラーシステム」です。
キャロル・ジャクソンはこの本の成功をもとに「カラー・ミー・ビューティフル社」を設立し、アメリカではこのビジネスの主流組織のひとつになっています。
他にもカラーシステムは様々あり、アメリカでは色々な形でカラーコンサルティングが行われています。
誰が最初かは定かではありませんが、日本の女性がアメリカでこのことを知り、カラーコンサルティングを受けたことをきっかけに、日本にもメディアを通して伝えられるようになりました。
これまで日本にもアメリカからこの方法が入ってきていますが、そのほとんどが白人を対象としたパーソナルカラーシステムを基本として使っています。サンフランシスコに日本人10人ほどでカラーコンサルティングの研修を受けに行った時に、ドレープで診断することもなく、「皆ウィンター!だって日本人だから!」と言われたと聞いたことがあります。このシステムが日本に入って来てから、日本人には似合いにくい色が入っていること、元々は人種のるつぼと言われるアメリカで白人や東洋人などと人種によって似合う色が考えられていたシステムを、単一人種の日本でそのまま使って診断することに無理があるのではないかと考える人たちによって、日本人向けのシステムなども開発されるようになりました。2003年以降日本では「パーソナルカラー検定」というものが行われるようになりました。3つの団体がそれぞれ独自の検定を行っていますが、目的や方法、使用するものが違うなど国が認めた統一されたものではありません。ですが、日本でもパーソナルカラーの重要性が年々高まっている証と言えるでしょう。